Picny
                          戦前の1935年、宮川製作所が製造した日本産カメラ。
                          日本人の手に収まる大きさ。時代を感じさせるしっかりとした重さ。




Picny


Picny,読みはピクニー。
宮川製作所が設計・製作し、三越デパートで1935年から1940年までの5年間販売された。販売価格は48円80銭。
当時、大卒の帝国銀行の初任給が70円。
仮に、初任給を17万円相当とすると・・・11万円強。

それでも、当時の日本は世界でも有数のカメラ普及率が高い国だったそうです。
この70年後も、日本人のカメラ好きは衰えることなく続いています。












 使用するためには、レンズ部分を引き出します。
 所謂、沈胴式と呼ばれるこの収納方式は、コンパクトデジタルカメラではもっともスタンダードなものになっています。
 なにせまともなプラスチックがないご時勢ですから、全体的に金属が使用されています。必然的にメカ部分が重くなるので・・・


  こうなります。飾るためには何らかの支えが必要ですね。最近は小型の三脚が安価に手に入るので、部屋では三脚を取り付けた状態が基本です。















 底面。
 真ん中が三脚穴で、左右がスプール(フィルム巻取り軸)の軸受け。送り側に製造番号No.2548と刻まれています。
  この個体は三脚穴は三脚を取り付けると、ほんの少しですが横にガタがあります。

  全体的に塗装剥がれや貼革の劣化が少なく、大切にされてきたことがよく分かります。むしろ、適度な角部分の擦れが古風な雰囲気を出していて良いです。







 レンズは「Picny anastigmat 1:4.5 F=40mm」を使用。4群構成であり、藤田光学機械製です。(F=40mmとは焦点距離:40mmということです。)
 シャッター機構は宮川製作所が独自開発したものです。 シャッタースピードは1/25,1/50,1/75,1/100秒と,B機能、T機能があります。シャッターレリーズは、レンズ側に取り付けられた小さいレバーになっています。今でこそ押しボタン式のレリーズが普通ですが、昔はこちらのほうが主流でした。

※補足
『B』(バルブシャッター)
レリーズを押している間、シャッターを開放する。
『T』(タイムシャッター)
1回目のレリーズで開放、2回目で閉じる。

沈胴式

 デジタルカメラの場合はスイッチオンで自動的に撮影可能状態になりますが、70年前はこうやって引っ張り出します。(ロールオーバーします)
 ロック機構のようなものは搭載されていないので、しっかり引き出します。
 引き出すと親指の上にあるフォーカスノブが、最初から最後まで動作させることができます。フォーカシングは最短1/3メートルから10メートル、∞まで。左の場合は、ストッパーのある初期位置/∞倍率となっています。







 人差し指側がチャージレバー、左側がレリーズレバーです。昔のカメラはチャージしてレリーズするというのが一般的な使用手順でした。稀に、チャージレバー無しのカメラもあるみたいです。
  シャッターにもブランドがあり、これは宮田製作所が独自に開発したもののようです。レリーズ時の所謂「カシャッ」 という音が小さいので、記念撮影のときは撮りましたという必要があるみたいです。









 チャージレバーの後ろには絞り調節があります。調節領域は左の通りに、4.5・6.3・7.5・11・16・22です。絞りとシャッター速の調整は露出計を使うか、パターンを覚えるか、です。
  僕の場合は、中古で買った小型露出計と、液晶画面でリアルタイム露出調整のできるG9を使って調整します。

 ・・・とはいえ、1秒以上の低速シャッターがないので、16から上はあんまり意味がないような・・・・・・。







 上面の軍艦部です。左からコントラストレンズ・ファインダー・軍艦部ロック・フィルム巻き取りノブです。
 コントラストレンズは使用しないときはここに取り付けておけます。
 ファインダーは倍率無しのガリレオ方式というものです。フィルムの露出サイズと同じ対比で、長方形に撮影対象を見ることができます。
  巻取りノブの横にあるのはフィルム交換時に開閉するためのロックです。解除することで軍艦部を丸ごと取り外すことができます。(ロールオーバー)この外した状態で、フィルムの詰め替えを行います。






軍艦部


フィルム比較

 フィルムです。右が120ブローニー、左が127ベスト。日本では絶版であるため、海外製造のものを使用するか、120ブローニーを裁断して自主製作する方法があります。
  フィルムの装填は、巻取り側のスプールに裏紙を巻きつけた状態で行います。(ロールオーバー)
  裏紙を隙間に入れるコツは、なるべくピンと張った状態で行うことです。名刺などをガイドにすると装填し易くなります。







 1つのフィルムで16〜18枚ぐらい撮れます。
  左側の赤窓に数字を合わせて1枚撮り、巻いて右側に前回の数字を合わせてもう1枚撮ります。(ロールオーバー)
  幾分昔の製品なので、こういった赤窓が開放されているタイプのフィルムスには、テープなどで蓋をすることをお勧めします。








フィルム巻取り


 ファインダー視点はこのようになります。少し小さくなる・・・感じですかね。カメラが左の姿勢で縦長に写ることになります。
  二眼レフのような6×6画面に慣れてしまうと、ワイド方向の切り替えが出来る反面、体勢も変わるので撮影に難しさを感じます。











 コントラストレンズです。(ロールオーバー)白黒フィルムを扱う場合のみ有効なフィルタ機能です。購入時にイエローのみ付属してきました。僕はレンズカバー代わりに使ってます。
  本当は専用レンズカバーも販売してたらしいのですが、どれだけ探してもカバー単体での中古販売は皆無でした・・・
 レンズ周りにネジが切ってあり、それに接続します。使わないときは、軍艦部にセットしておけます。







コントラスト調節




以上。
70年前のカメラとは思えないほどの状態の良さです。前オーナーに感謝。


前述しましたが、このカメラで使用するフィルムがもう日本では生産されていないことです。

しかし、インターネットとは便利なもので、
調べてみると2つの方法がありました。

1.大きいサイズのフィルムを裁断して使用する
2.海外の製品を使用する

まずはレンズの状態とシャッターの確認をするために、製品を使用することに決めました。
まぁ、安心感の問題です。


で、ドイツ製のカラーフィルムと、クロアチア製の白黒フィルムを取り寄せました。
以下が撮影結果です。


   

   


非常に味のある出来になりました。

カラー・ドイツ玉はともかく、白黒のクロアチア玉は非常にアレな出来となってしまいました。
現像して下さった方曰く、古いフィルムを現像した場合と似ているそうです。
今回は現像カップを用いて現像されたため、次回は昔ながらのトレイを使った現像方法で試してみるとおっしゃってました。


今度、フィルムの裁断をしてみようと思います。



(04/26.2009)


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